時代劇で江戸庶民の暮らしを描くときには、必ずと言っていいくらい
七輪でサンマを焼いている光景が出てきますよね。。
七輪は、時代でいうと江戸時代あたりから都市部を中心に急速に
普及したのは間違いありません。
七輪そのものの誕生は平安時代だと考えられていますが、私たちが
知っている形になったのは、やはり江戸時代のようですね。
そして、昭和の時代になっても第二次世界大戦後の暮らしが
貧しい頃はほとんどの家庭で使われていた調理用具でした。
しかし、ガスコンロなどの普及によって七輪はあっという間に
家庭の台所から姿を消してしまったんです。
けれど、今ではバーベキューやキャンプなど、野外での調理用具として
人気アイテムになっていることはご存知ですよね。。
このように、七輪はその時代ごとに流行ったり、すたれたりしても、
無くなることはありませんでした。
今回は七輪が平安の時代から現在に至るまで、使われ続けてきた
理由を紹介したいと思います。
また、七輪が誕生した由来も、もう少し詳しく紹介しますね。。
七輪はいつの時代からあるの?
日本で人が火を利用して食べ物を焼いたり、寒さをしのいだりしたのは
30万年くらい前の石器時代だと考えられていますが、はっきりした記録は
残っていません。
火をどのように使用したのか、がはっきり分かるのは1万年くらい前の
縄文時代の遺跡からです。
しかし、まだ持ち運びができる火床ではなく、地面の上に石で囲った
だけの炉で火を焚いていました。
やがて、平安時代になると今の七輪とは形は違うけれど、初めて
持ち運びに耐え得る火床が使われていた記録が残っているんですね。
そして、江戸時代になると家の土間にかまどを作って、そこで煮炊きを
したのですが、かまどとは別に、持ち運びができて煮炊きもできる便利な
七輪が現われたんです。
なので、時代劇では、裏長屋の外に七輪を持ち出してさんまを
焼いていたというわけなんですね(^^♪
七輪が江戸で普及したのは、なぜ?
江戸の町では、夕方に、ちょっと路地に入るとどこでも七輪で
サンマを焼いている光景が思い浮かびますよね。
しかし、本当は、長屋の路地でそんな煮炊きの様子を見ることは
ほとんどありませんでした。
江戸の長屋の居住者はほとんど単身者で、妻帯者は少なかった
ようなんですね。
ですから、ほとんど外食ですが、気の利いた定食屋があるわけでも
ないので、屋台の立ち食いでした。
それも、食べたいときに食べるので一日三食とは限らないんですね。
そんな江戸の暮らしで大いに発達したのが寿司、天ぷら、うなぎ、
そば、団子、饅頭、ところてん・・・の屋台でした。
その屋台で無くてはならないのが七輪だったんです。。
一方、江戸の住人の半分は武士でした。
武家屋敷では使用人もいましたし、一日の作業が決まっていたので
一日三食きちんと食べていたようです。
武家の台所ではかまどだけでは足りず、七輪が無くてなならない
台所用品だったんです。
また、商家でもたくさんの人が働いていましたから七輪が必需品で
あったことは想像できますね。
このように、七輪が爆発的に普及したのは、実は、江戸庶民が
使ったからではなく、屋台、武家、商家で使われていたからだった
んです。。
出典:「うつくしく、やさしく、おろかなりー
わたしの惚れた『江戸』」(杉浦日向子著)
なぜ、七輪(しちりん)と呼ばれるの?
いくつかの説があるのですが、はっきりとは分かっていません。
煮炊きをするのに必要な木炭が、「7厘」で買うことができたと
いう説が有力なんですが、7厘で買える木炭はたったの0.3gなので、
ちょっと無理ですよね。
本当は、少ない木炭で長時間の火力が得られることから、
「費用対効果」が良い、という意味で「七厘」→「七輪」と
呼ばれるようになったのではないでしょうか。。
ところで、関西では七輪のことを「かんてき」とも呼ばれます。
かんてきを大辞林で調べると「 怒りっぽいこと」なので、つまり、
「 怒りっぽいこと」を「火をおこしやすい」にかけたようですね。
七輪の昭和の時代の盛衰!
明治期には木炭のほか豆炭、練炭が七輪の燃料として盛んに
利用されるようになると、「費用対効果」の高さから、
七輪がいっそう普及していきました。
第二次世界大戦後の都市部では、土間やかまどのないバラックで
便利に使えるため、七輪一つで炊飯、煮炊き、魚焼きまで
こなしたんですね。
このように、使い勝手のよい七輪は大量に製造されて日本各地の
家庭で使用されるようになっていくんですが・・・
しかし、燃料となる木炭の生産量が激減すると共に、ガスコンロなどの
調理器具に換えられていくことになるんですね。
(出典:Wikipedia「七輪」)
ところが、いったん衰退したかに見えた七輪には不思議な魅力が
備わっているため、現代のグルメ、レジャーの分野で復活することに
なるんです。。
七輪がBBQやキャンプで人気なのは、なぜ?
七輪の原料である珪藻土は断熱性が高いため保温効果が極めて高く、
本体が熱く焼けないため持ち運びが容易でなんです。
また、赤外線の発生量も多く熱効率が極めて高いため、燃料が
節約できるんですね。
この2つの利点があることで、BBQやキャンプの調理用具として
七輪が選ばれたということです。
さらに、七輪で食材を焼くと、炭火の赤外線効果で食材が持っている
本来の旨味を楽しめることに、みんなが気付いたんですね。
また、焚火(たきび)でも言えることなんですが、自然の中での
火の赤々とした暖かさに神秘的な力を感じることができるんです。
特に、暗くなった野外で真っ赤な火を見ていると、あなたも、きっと
自然のなかで生かされているという不思議な実感が得られるはずですよ。。
まとめ
七輪は今の形になった江戸時代いらい、いつの時代でも便利な
調理用具として利用されてきました。
その理由は持ち運びが容易であることと熱効率が高いうえに
費用対効果が優れているからでした。
江戸時代から昭和の初め頃にかけては七輪を持たない家は
無いほどだったようですね。
その後ガスコンロや電子調理器などの普及で衰退することも
ありましたが、最近ではキャンプやバーベキューなどのレジャーで
利用する人が多くなって復活してきました。
火をおこして、煮たり、焼いたりするだけなんですが、赤々と
燃える七輪の火の輝きと暖かさに、きっとあなたも魅了されるはず
ですよ。。