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「なれずし」は昔の人の保存食!長期保存ができる理由と栄養価についても紹介!

鮒ずし

滋賀県 鮒ずし

日本の食文化であるお寿司の形態には握り寿司のほかにも、いなり寿司、
押し寿司、ばら寿司などいろいろあるんですが、そんなお寿司の原形と
言われているのが「なれずし」なんです。

なれずしは冷蔵庫などない昔の人が保存食として考え出した発酵食品
ですが、琵琶湖のある滋賀県の鮒ずし(ふなずし)、岐阜県の鮎ずし
(あゆずし)などはよく知られていますね。

今回は、なれずしの長期保存を可能にしている理由をお伝えしますが、
なれずしの栄養価についても紹介していきます。

 

なれずしが長期保存できる理由

琵琶湖の風景

滋賀県 琵琶湖

なれずしは冷蔵庫などなかった古代の人が動物性たんぱく質を長期に
保存するために考え出した画期的な保存食です。

また、なれずしの特徴としては、主に魚を塩と米飯で乳酸発酵させた
発酵食品であることがあげられます。

では、そんななれずしの長期保存を可能にした理由を紹介していきますね。

 

保存食としての画期的な原理

保存食として画期的なのは乳酸発酵の原理を利用したところにあります。

つまり、食品を保存するためには腐敗菌の増殖をカットしなければ
ならないんですが、そのためには乳酸菌の持つ2つの能力がポイント
ります。

1、酸素の少ない環境に強い。

2、高い酸性度に強い。(ph4程度でもOK)

腐敗菌は酸素の少ない環境では増殖できませんし、その上ほとんどの
腐敗菌は高い酸性度(pH5以下)では死んでしまうんです。

では、この原理がなれずしを作るときに、どのように働いているのかを
みてみましょう。

なれずしを作るときに、魚などと御飯を桶に漬け込んで、しっかり重しを
することで酸素が遮断されると御飯の栄養で乳酸菌だけがいっせいに増殖を
始めます。

この時、乳酸の増殖によって酸性度が高くなるので腐敗菌の増殖が抑え
込まれてしまうんですね。

こうして、乳酸菌が作ってくれた乳酸が残っている限り腐敗菌は増殖
できないので長期の保存が可能になるわけです。

これがなれずしの保存食として長期保存を可能にした原理なんです。

ちなみに、乳酸菌は人の腸内環境を正常な状態に維持するのに役だ
っていると考えられているので、現在も製薬メーカーなどが盛んに
研究を続けていますよ。

参考資料:
e-ヘルスネット(厚生労働省)
乳酸菌 Wikipedia
乳酸 Wikipedia
酸発酵 Wikipedia

 

乳酸発酵の原理を古代人が知ったのはなぜ?

実は、UFOが飛来して古代人に知識を授けたのです!ならば楽しいですね。(^^♪

実際は、なれずしは『延喜式』の記録によると、今から1千年以上前の
奈良時代には存在していたと考えられています。

ただ、なれずしの記録が九州北部、四国北部、近畿、中部地区に多く、
関東以北には見られないのが特徴的なんですね。

参考資料:寿司 Wikipedia

『延喜式(えんぎしき)』とは

平安時代中期に律令の補完・修正のために出された法令集ですが、その中に
諸国からの貢納品が記されています。

 

さて、古代人が乳酸菌や腐敗菌などという発酵の知識を持ち合わせて
いたはずはないのですが、どうしてなれずしが誕生したのでしょう?

また、中部地方から西の地域で発達したのはなぜなのか?

その理由を考えてみるとなれずし誕生の秘密は自然環境にあったことが
ひらめいてきます。

西の地域のほうが温暖で雨が多く湿度が高いために、生ものが腐りやすい
環境だったために発酵の知識を得やすかったと考えられるんです。

つまり、腐りやすい環境を裏返せば、発酵に適しているということにも
なるので、経験的に保存食として発酵食品を作る知識が蓄積されていった
というわけなんですね。

何度も試行錯誤をくり返すことが、やがて腐りやすい素材を長期に保存
できるなれずしという発酵食品を完成させることに繋がったのでは
ないでしょうか。

 

なれずしの保存期間

鮒ずしのお土産

鮒ずしのお土産のパック

なれずしの典型ともいえる滋賀県の「鮒ずし」の場合は、桶に漬け
込む期間は普通数ヶ月~1年ほどですが、数十年間も漬け込んだもので
も食べることができるそうです。

要するに、なれずしの乳酸発酵が続いている限りは食中毒を起こす
ような腐敗菌は増殖できないので食べることが可能なんですね。

また、乳酸発酵によって過度に酸性度が高まることで乳酸菌さえも
死んでしまった場合にも、乳酸菌によって作られた乳酸が残っている限り
食べることができるはずです。

なので、琵琶湖周辺で鮒ずしを作っている方の話を聞くと100年は
大丈夫だろうと言われていますよ。

 

なれずしの栄養価について

切り分けてお皿に盛った鮒ずし

切り分けてお皿に盛った鮒ずし

なれずしの素材にした魚は発酵によって強烈な匂いを発するようになる
とともに旨味も持つようになり、漬け床にした飯には独特な酸っぱさが
ついてきます。

また、発酵による素材の変化は匂いや味だけではなく、素材の栄養価にも
変化が起こってきます。

このことは発酵によって元の素材の栄養素に3つの変化を起こしている
ことを表しているんですね。

 

1、発酵による新しい栄養成分の生産

元の素材が持っていなかったビタミン群やアミノ酸などの栄養成分を
生み出すんです。

素材が魚のなれずしではビタミンB群が生産されることが分かっていますよ。

また、長期の乳酸発酵によって、頭から尾まで食べることができる
ようになりますからカルシウムを効率的に摂れるようになりますね。

 

2、発酵食品は消化・吸収が良い

発酵の過程で微生物の働きによって素材の栄養成分が分解されるので、
食べたときに胃腸や肝臓にかかる負担が少なくなるんですね。

なので、熟成したなれずしでは栄養成分を効率よく消化・吸収できる
ようになっています。

 

3、乳酸発酵による乳酸菌の増加

乳酸発酵によって、なれずしには乳酸菌がたっぷり含まれています。

乳酸菌は腸内の善玉菌の一つですから腸内環境を整え、免疫力を高め、
疲れにくくしてくれる効果が期待できるんです。

 

日本各地のなれずし

鵜飼の景色

宇治川の鵜飼

もともと、なれずしは保存食として日本の各地で作られてきたもの
なんですね。

ところが、独特な匂いと味が評判になって人気を集めるようになると、
各地の伝統的な郷土料理として、名産品に変わってきました。

もっとも、今でも自分の家で食べるためだけに作っている家庭もたくさん
あるようですよ。

ここで紹介するなれずしはすでに有名になったものだけをピックアップした
のですが、日本各地にはまだまだたくさんのなれずしがあるんです。

滋賀県の「鮒ずし」(鮒以外の淡水魚も使う)

和歌山県の「さんま」「さば」

福井県の「へしこ」(漬け床にぬかを使っている)

岐阜県の「鮎ずし」

石川県・富山県の「かぶら寿司」(かぶらにブリを挟んで発酵させる)

秋田県の「ハタハタ寿司」

(参考資料:なれずし Wikipedia)

 

まとめ

なれずしが数ヶ月~数十年の長期間にわたる保存を可能にしている理由は
乳酸発酵を利用した発酵食品だからなんです。

乳酸発酵の原理を簡単にまとめると、米飯の糖質が乳酸菌の働きによって
乳酸が生成されるという発酵形態になります。

つまり、なれずしの加工工程で空気(酸素)を遮断することで腐敗菌の
増殖を防ぎ、酸性度の高い乳酸によって酸性に弱い腐敗菌を死滅させる
ことが長期保存を可能にしていたんですね。

また、なれずしの栄養価については3つの特徴によって体によい影響が
あるといわれています。

①元の素材が持っていなかった栄養素を生産してくれる。

②素材の栄養素を発酵過程で分解してくれるので消化・吸収しやす
くなる。

③乳酸発酵によって増殖した乳酸菌によって腸内環境を整えるなどの
効果が期待できる。

また、乳酸発酵によって作られたなれずしには独特の匂いと奥深い味わい
が付加されて、今では保存食というより人気の高い郷土料理という意味合い
が強いですね。

 

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