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おそばにはどんな栄養があるの?成分とからだへの効能も解説

そばがきの写真

そばがき

昔の修験者(しゅげんじゃ)は、そば粉を携行して山に入り、そば粉を
湯溶きするだけの「そばがき」を食べて厳しい修行を乗り切ったと
言い伝えられています。

今でこそ、研究によって、そばが栄養価の優れた食材なのは確かめられて
いますが、昔から、そばのからだへの効能が分かっていたんですね。

実際、そばの成分のなかでも、たんぱく質、ミネラル、食物繊維、ビタミンB1、
ビタミンB2などは、小麦粉や精白米に比べて多く含まれています。

実は、そばの栄養価が高い理由の一つは、そばの実の構造にあるんですね。

つまり、小麦やお米は栄養豊富な胚芽を取り除いた部分を使うのが普通ですが、
そばの胚芽はそばの実の真ん中にあるので取り除くことができないため
なんです。

また、ポリフェノールの一種の「ルチン」という成分は、アスパラガス、
オレンジ、レモンなどとともに、そばにも多く含まれていて、栄養価を
高めるのに一役買っています。

今回は、わたしたちに親しまれていながら意外に知られていない、おそばに
含まれる成分とからだへの効能をお伝えしていきますね。

 

そばは何に効くの?

ざるそば

お米や小麦と同じくらいのカロリーがあるので、おそばも空腹を満たして
くれる食材です。

ただ、お米や小麦と違うところは、栄養価が高いことと、そばに特有の
成分を含むため、高血圧、動脈硬化、発がんなどの生活習慣病を予防する
効能があることです。

また、老化防止や免疫力の向上などにも効果があるといわれていますよ。

ちなみに、そばはお米や小麦よりも種をまいてから収穫までの期間が短く、
やせた土地でもよく育ち、寒さにも強いので食物の貧しかった昔の人たちを
ずいぶん助けたはずです。

そのためでしょうか、そばの花言葉は『あなたを助ける』なんですね。

 

そばの「栄養成分」と効能は?

そばの実

一般に、食材に含まれる成分は、からだへの働き方によって「栄養成分」
「機能性成分」に分けらます。

栄養成分とは

栄養成分とは、人が生きていく上で絶対に欠かすことのできない炭水化物、たんぱく質、脂質、無機質(ミネラル)、ビタミンの5大栄養素のことです。

 

機能性成分とは

機能性成分とは、生命維持に必ず必要な成分ではないものの、老化防止、高血圧の予防、免疫力の向上などの健康維持や病気の予防などに効果を発揮する成分のことです。

 

そばにも、この2種類の成分が含まれていますから、最初に「栄養成分」から
お伝えしていきますね。

 

そばに含まれる主な「栄養成分」は9つ

下表は、9つの「栄養成分」の含有量と精白米および小麦粉に比較して
何倍になるのかを表わしています。

そば粉の栄養成分 (可食部100g当たり) 精白米および小麦粉に比較
タンパク質 12.5 g 約2倍
カリウム 410 mg 約4倍
マグネシウム 190 mg 約10倍
リン 400 mg 4~6倍
ビタミンB1 0.46 mg 4~6倍
ビタミンB2 0.11 mg 4~5倍
ビオチン 17.0 μg 10倍以上
ナイアシン 4.5 mg 4~7倍
食物繊維 4.3 g 2~3倍

参考資料:日本食品標準成分表2015年版(7訂)文部科学省

そばに栄養成分が多く含まれている理由には、小麦やお米と違って
精製しないで挽(ひ)くことがあげられます。

つまり、小麦やお米は栄養豊富な胚芽を取り除いた部分を食用にするのが
普通なのですが、そばの胚芽はそばの実の真ん中にあるので取り除くことが
できないんですね。

また、通常、そばは皮ごと挽くので、皮の下の栄養が含まれるのも
栄養の豊富さの一因です。

 

9つの「栄養成分」の効能

そば粉の写真

 

たんぱく質 (約2倍)

注:()内は精白米および小麦粉の含有量と比べた倍率です。

たんぱく質の働きは多種多様で、わたしたちが生きていくために
欠かせない必須の栄養素です。

そばのタンパク質は動物性たんぱく質に近く、生卵にも匹敵する
バランスの良さが特徴です。

動物性たんぱく質は脳やからだの健康に良いそうです。

また、そばのたんぱく質は消化があまり良くないことが難点とされて
きましたが、その消化性の低さが血中コレステロールを下げるのに
役立っているという報告もあるんですね。

 

カリウム (約4倍)

カリウムにはナトリウムの排泄を促がす作用がありますから、塩分の
とり過ぎによる血圧上昇を抑えてくれます。

また、カリウムは筋肉の働きをサポートする作用があるので、不足すると
力が出なくなりますし、夏バテの原因にもなるといわれています。

 

マグネシウム (約10倍)

マグネシウムは骨や歯の形成を促進させる働きがあるので、骨粗鬆症を
予防する効果があります。

また、酵素の働きを助ける役割を担っていて、主にブドウ糖をエネルギーに
変化させるエネルギー変換酵素の活性化にかかわっているため、
わたしたちの活気ある生活には欠かせません。

 

リン (4~6倍)

カルシウムやマグネシウムとともに骨や歯の形成に不可欠な成分です。

リンは多くの食品に含まれていて、牛乳にも比較的多く含まれています。

 

ビタミンB1 (4~6倍)

ビタミンB1は食べた物をエネルギーに変換する作用に関与するため、
不足すると倦怠感、イライラ感、手足のむくみなどの症状が現われます。

通常の食品で可食部 100 g 当たりのビタミン B1 の含有量が 1 mg を
超える食品は存在しないので、そばの含有量の0.46mgは相当多い
いえます。

 

ビタミンB2 (4~5倍)

ビタミンB2 はエネルギー代謝全般に関わっていて、皮膚、髪、爪などの
細胞を再生する働きがあり、肌荒れや口内炎などを解消してくれることが
期待できます。

通常の食品で可食部 100 g 当たりのビタミン B2 含有量が 1 mg を超える
食品は、肝臓を除き存在しません。

豆類に比較的多く含まれ、味噌やしょう油にも多く含まれていますが、
そばの含有量( 0.11 mg)とだいたい同じくらいです。

 

ビオチン (10倍以上)

ビオチンにはアレルギー症状を緩和する作用があり、不足すると皮膚炎、
舌炎、食欲不振、ムカつき、性感異常などを起こしやすくなります。

通常の食品で可食部 100 g 当たりのビオチン含有量が数十μg を超える
食品は、肝臓を除き存在しませんから、そばのビオチンは貴重ですね。

 

ナイアシン (4~7倍)

「日本食品標準成分表」に記載されているナイアシンは、ニコチンアミドと
ニコチン酸の総量ですが、植物性食品に含まれるのはニコチン酸で、
ニコチンアミドは動物性食品に含まれます。

なので、ニコチン酸は、植物性食品に存在しますが、高い食品でも数mg
(可食部100gあたり)程度ですが、そばの含有量の4.5mgはかなり高い値です。

ナイアシンが欠乏すると、ペラグラというナイアシン欠乏症が発症し、
主な症状は、皮膚炎、下痢、精神神経症状です。

ただ、ニコチンアミド、ニコチン酸は広くさまざまな食品に含まれて
いますから、普通の食生活で不足することはほとんどありません。

 

食物繊維 (2~3倍)

食物繊維は便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の
抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかに
なっています。

日本人の食物繊維の摂取量は、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、
減少傾向にあります。

ご飯やパンの代わりに、出来るだけそばを食べるようにしたいですね。

 

そばに含まれていない「栄養成分」

悩んでいる女性の写真

by photoAC

 

さまざまな「栄養成分」が含まれるそばですが、ほとんど含まれない
「栄養成分」もあるんです。

含まれない主な成分は次の5つですが、どれもからだには欠かせません。

・ビタミンC
・ビタミンD
・ビタミンK
・ナトリウム(塩分)
・β‐カロテン

しかし、知っていると心配しないでおそばがいただけるように、それぞれの
成分の基本的な事がらをお知らせしますね。

 

ビタミンC

ネギなどの薬味でいただいたり、野菜のかき揚げそばなど、好みで工夫が
できますね。

また、食後のデザートで果物のビタミンCを摂ることもおススメです。

 

ビタミンD

紫外線に当たることで体内で合成できますから、健康な人であれば日光の
もとで普通に生活をしていれば不足することは少ないです。

また、乳製品、魚、きのこなどのさまざまな食品に含まれているので、
ビタミンDが欠乏することはまれのようですよ。

 

ビタミンK

さまざまな食品に広く含まれていることと、体内でも合成できるので
ビタミンKが不足することはほとんどないそうです。

 

ナトリウム(塩分)

普通の食生活であれば不足することはありません。

むしろ、摂り過ぎることで起こる高血圧などの生活習慣病が問題になって
いますから好都合ですね。

ただ、そばの乾麺には塩分が多めに含まれていますが、茹でることで
ほとんど溶け出してしまいますから心配はないようです。

 

β‐カロテン

β‐カロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されて作用します。

また、ビタミンAはいろいろな食品にも含まれ、体内に蓄積されやすい
成分なので不足することはまれです。

 

そばの「機能性成分」と効能は?

機能性成分とは、前述した通り、生命維持のために必須ではないものの、
健康なからだを維持するために有効性を発揮する成分のことです。

そばに含まれる「機能性成分」は次の4つなので、それぞれの効能を
お伝えしますね。

・ルチン
・ケルセチン
・カテキン
・カイロ-イノシトール

 

4つの「機能性成分」の効能

アスパラガスの写真

 

ルチン

ルチンはポリフェノールの一種なのですが、そばのほかには、アスパラガス、
オレンジやレモン(柑橘類)などにも含まれています。

ポリフェノールとは

ほとんどの植物に含まれている色素や苦みの成分で、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きがあります。
また、フラボノイドは植物色素のことですが、ポリフェノールと同じ意味で使われることがあります。
(出典:ポリフェノールWikipedia)

 

そばの栄養素といえばルチンという答えが返ってくるほど、そばを代表する
成分なんですが、その効能を箇条書きにまとめました。

・毛細血管を強化することによる内出血の予防

・血流改善効果によって血圧を下げたり、肌つやをアップする作用。

「アトピー」「喘息」「関節炎」「口内炎」などを予防する抗炎症作用。

過剰な活性酸素を抑える抗酸化作用。

特に、血流改善効果と抗炎症効果については多くの論文が報告されています。

なお、ルチンはビタミンCと一緒に摂取することで、上記の効能がいっそう
強化されるのですが、残念ながらそばにはビタミンCはほとんど含まれて
いません。

なので、おそばを食べるときには、ビタミンCを多く含む大根おろし、ねぎや
きゅうりなどを薬味にすることがおススメです。

また、食後のデザートにキウイフルーツ、イチゴやみかんなどをいただくと
効果的ですよ。

 

ケルセチン

ケルセチンはリンゴ、玉ねぎ、ブロッコリーなど、身近な野菜・果物に
豊富に含まれるポリフェノールの一種です。

ルチンとほぼ同様の効能があるうえに、肥満と認知機能の改善に効果がある
との報告があります。

ケルセチンについて調べていくと、肥満や認知機能を改善する目的で、
企業などがケルセチンに注目し、研究している気配を感じましたよ。

 

カテキン

カテキンもポリフェノールの一種で、緑茶の苦み成分でもあります。

抗酸化作用や殺菌・抗菌作用があるため、O-157や食中毒の予防の効果が
期待できます。

 

カイロ-イノシトール

カイロ-イノシトールは自然界に存在する天然の物質ですが、そば以外
の植物にはほとんど含まれていません。

糖代謝を改善する働きによって、血糖値の上昇を抑えるのに有効だと
いわれています。

また、肝臓の機能の改善やアレルギー皮膚炎の改善などの報告もあり、
今後、注目されていく可能性が高い成分です。

 

「そば湯」のからだへの効果は?

そば湯の写真

そば湯

蕎麦屋さんによっては、おそばを食べた後に漆塗りの急須で
そば湯を出してくれるところがあります。

そば湯はおそばを茹でたお湯なので、おそばの栄養が溶けだして
いることは確かなんですが、実際はそれほど栄養豊富ではない
ようなんですね。

そばの健康への効果を代表する天然のルチンは不溶性なので、
そば湯にはほとんど溶けだしていないんです。

また、そばの食物繊維のほとんどは不溶性食物繊維なので、やはり
そば湯にはあまり溶けだしていません。

とはいっても、水溶性の栄養成分はゆで汁に溶け出していますから、
栄養価がないはずはありませんよ。

ふつう、うどんのゆで汁は飲まれませんが、そば湯が飲まれるのは
栄養価が高いからではなく、風味が好まれるからなんですね。

 

「生麺」と「乾麺」では効能が違う!?

そばの乾麵の写真

 

そばは生麺でも乾麺でも栄養価の違いはほとんどありません。

なお、同じ分量の生麺と乾麺は、茹でたあとの分量が違ってきますから
比べるときは実際に食べる量(一食分)で比べるんですね。

ただ、実際には、そば粉の割合が5割とか8割とか、好みによりますから、
比べること自体あまり意味はないような気がします。

また、前述したように、そば粉には含まれないナトリウム(塩分)が
乾麺にはかなりの量含まれていますが、ゆでるときにほとんど溶け出して
しまうため、食べるときには気にする必要はありませんよ。

 

からだが弱っていたら「そば」それとも「うどん」?

煮込みうどんの写真

風邪をひいたり、からだが弱っている時の食事にはうどんがいいと
言われるけど本当なんでしょうか?

おそばは決して消化の悪い食材ではないんですが、うどんに比べると
やはり劣るかもしれません。

その理由はそばに含まれているタンパク質、食物繊維、脂質がうどんより
多いために消化するのに時間がかかってしまうためなんです。

なので、じっくり煮込んだうどんの方が柔らかくて消化もいいですし、
からだも温まるので、体調の悪いときはうどんがおススメですね。

また、どうしてもそばが食べたいというのでしたら、大根おろしと一緒に
「おろしそば」にしていただけば、大根のジアスターゼが消化を助けて
くれるでしょう。

 

そばアレルギーは本当に怖いです!

顔にじんましんが出た女性のイラスト

そばアレルギーは百年くらい前にも報告のある、古くから知られている
アレルギーです。

症状はさまざまで、喉の腫れ、咳、鼻水、じんま疹、おう吐などが
食べてから短時間のうちに発症することが多いようです。

その症状は重篤な場合も多く、そばアレルギーの小学生が給食の
そばを食べたときの発作で亡くなる事故があってから、全国の小・中学校の
給食メニューには蕎麦がないんですね。

現在、原因となるタンパク質を特定する研究も進められていますが
アレルギーの原因物質をすべて除くことはできないようです。

なので、加工食品にそば粉を使っている場合には「そばを使って
いる」という表示が義務付けられています。

よく、特定の食品アレルギーは少しずつ食べることで、からだを
慣らしながら克服することも可能だといわれますが、そばアレルギーは
克服することが難しいようです。

残念ですが、そばアレルギーが疑われる症状が出たら、そばには
近づかないことが肝心ですね。

特に、幼児に初めておそばを食べさせる時には、少しずつ
食べさせてみる慎重さが必要ですよ。

 

まとめ

そばはご飯やうどんのように、食事の際の主食になる食材ですが、
ご飯やうどんと比較すると栄養価が高いです。

つまり、生きていくために必須の「栄養成分」でも、からだを良い状態に
維持する「機能性成分」でも、お米や小麦よりも優れているんですね。

この記事では、そばに含まれる成分と効能についてお伝えしていますが、
そばには含まれていない成分にも言及しました。

また、そばの生麺と乾麺との比較と、体調の悪いときのそばとうどんを
比較してみました。

なお、そばアレルギーが食品によるアレルギーの中でも、特に怖いことも
お知らせしています。

なので、この記事からは、おそばがどんな食材なのか分かっていただける
はずですから、安心しておそばを楽しんでくださいね。

 

おそばの旬を紹介しています。
おそばが美味しい旬の季節っていつ?

 

【参考資料】

・蕎麦:Wikipedia
・ルチン:Wikipedia
・ポリフェノール:Wikipedia
・カイロ-イノシトール:Wikipedia
・ピニトールとカイロイノシトール:食品総合研究所 八巻幸二
・日本食品標準成分表2015年版(7訂)文部科学省
・教えて、先生!β-カロテンってどんな栄養素?:桂 博美
・ビタミンA:Wikipedia
・ビタミンD:Wikipedia
・ビタミンK:Wikipedia
・たんぱく質:Wikipedia
・リン:Wikipedia
・水溶性ビタミン:厚生労働省
・食物繊維:e-ヘルスネット(厚生労働省)

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