のれん(暖簾)とは、お蕎麦屋さんや銭湯などの入り口に
掛けられている、あの布地のことです。
お客さんがのれんを手でかき分けながらお店に入る姿は、
日本らしい風情を感じますよね。
このように、のれんには何のお店なのかを表す看板の意味合いが
あるんですが、ほかにも2つの意味で使われているんです。
今回は、のれんが持っている3つの意味を紹介します。
また、のれんの由来を知るとイメージしやすくなりますから、
由来についてもお伝えしますね。
のれんが持っている3つの意味とは?
のれんには3つの意味で使われますが、まったく関連のない意味では
ないんですね。
つまり、お店の軒先に吊り下げられるのれん(暖簾)から始まって、やがて
別の2つの使われ方がされるようになったんです。
①お店の看板として
お店の軒先に吊り下げられたのれんって、お店の看板そのものって
感じがしますね。
目的のお店が営業中なのかお休みなのかも、のれんが掛かっているか
どうかで遠くからも分かって便利ですね。
店頭にかけられているのれんは看板の役割があるのですが、もう少し
踏み込んで見てみると、次の3つの働きが見えてきます。
お店の営業内容が一目で分かる
のれんのデザインを見れば、このお店はどんな営業内容なのかが
一目で連想できます。
そのために、のれんにはロゴや屋号が染め抜かれていますし、形や
素材、色彩が工夫してデザインされているんですね。
お店の商品やサービスをアピールする
のれんを個性的なデザインにすることで、お店の商品やサービスが
魅力的であることをアピールするのに効果的です。
特に、のれんは海外にはない日本独特の文化ですから、海外からの
観光客にとっては、意外な使われ方に感動するようですよ。
「のれん分け」の”のれん”
お店の看板を意味する特徴的な言葉に「のれん分け」があります。
のれん分けとは、長い年月務めていた従業員に対して店舗の屋号を
使用することを許可して独立させることなんです。
「のれん分け」ののれんの意味は看板というよりお店そのものを指して
いるくらいお店と同化してしまっているんですね。
②ことわざのたとえとして
今や、のれんは看板だけの意味にとどまらず、わたしたちの暮らしの中で、
ことわざのたとえとして活躍していますよ。
「のれんに腕押し(のれんにうでおし)」
力を入れても手応えのない、張り合いのない様子を意味するたとえ
です。
つまり、対抗心のない相手と競い合うことの張り合いの無さをいって
いるんですね。
同じ意味のたとえに「糠に釘(ぬかにくぎ)」があります。
「のれんにかかわる」
「お店のプライドや格式を傷つけるような下手な言動をしないようにしなけ
ればならない」という意味で、歴史のある老舗のお店に対してよく使われ
ます。
お店の格式や信用に悪い影響を与えるたとえですね。
③企業の会計用語として
企業の会計で「のれん」という勘定科目として使われています。
勘定科目とは、日々の取引を帳簿に記入する時に使われるもので、その
性質をわかりやすく記録するための分類項目のことです。
たとえば、「売上高」「買掛金」「通信費」などは勘定科目です。
さて、のれん勘定は、企業が売買や合併で支払った金額のうち、買収先の
企業の純資産を上回った差額を「のれん」勘定で表します。
具体的な例では、
A社が純資産100億円のB社を120億円で買収したとします。
この場合、A社は100億円の価値があるB社を、20億円多く支払って購入
したことになりますね。
この差額である20億円が「のれん」になります。
のれんの由来は?
古来、建物に直接風や光が入るのを防いだり、外からの目隠しのために垂れ布で
仕切りました。
平安時代の絵巻物には、すでにその様子が描かれているんですね。
冬用と夏用に素材を変えて吊り下げていたようです。
冬用のものを「暖簾(のれん)」、夏用のものを「涼簾(りょうれん)」と呼んだそうです。
りょうれんははただの「すだれ(簾)」となって、今に至っています。
のれんには、次第に屋号や商標が書かれるようになり看板としてイメージされ始めます。
江戸時代になると染め物の普及によって、お店の宣伝を兼ねそなえた和風ののれんに
進化して、やがてお店の信用・格式を表すようになったんですね。
今では、お店の顔としての役割を果たすだけではなく、会社の価値を表す会計用語にも
なっているんです。
まとめ
のれんの歴史をたどれば日よけや外からの目隠しとしてのただの垂れ布
でした。
その垂れ布が今では「のれん」という名前で3つの意味を持つように
なり、それぞれが立派にひとり立ちしています。
①お店の魅力をアピールする看板としての役割をはたしている。
②ことわざのたとえに使われている。
③企業の会計の中で勘定科目の1つになっている。
ちなみに、店先に吊り下げられたのれんは世界で日本にしかない文化
ですから、和風に魅せられた外国人がお土産に買って帰ることも少なく
ないそうです。
そういわれてみれば、わたしの家の台所とダイニングをのれんで
区切っていることに気が付きました。
布を垂らしただけののれんですが、意外なところで使われているかも
しれません。
なにげなく見過ごしていたのれんですが、「こんな使われ方もあるんだ!」
と感心するようなのれんを探してみるのも楽しいですよ。