スーパーでは、ねぎの白い部分はきれいに洗われてつやつやなのに、
青い部分は邪魔物のように切り落とされていますよね。
それに対して、農産物直売所のねぎは青い部分も先端までしっかり残して
売られているんです。
この違いから、ねぎのことを誰よりもよく知っている生産者さんが
「青い部分にも価値があるんだよ」と教えてくれていることが分かりますね。
実は、一本のねぎなのに青い部分には白い部分より豊富な栄養成分が含まれて
いるんです。
なので、今回は、青い部分の栄養成分について解説するとともに、便利な
利用方法もお伝えしていきますね。
青い部分に含まれる栄養成分と効能は?
ねぎの白い部分と青い部分の栄養成分が比較できるように下表にまとめ
ました。
下表のあとで、青い部分の含有量の多い主要な成分と効能を解説していき
ますね。
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)(文部科学省)
栄養成分 | 白ねぎ (根深ねぎ) | 青ねぎ (葉ねぎ) |
---|---|---|
エネルギー /Kcal | 34 | 30 |
水分 /g | 89.6 | 90.5 |
タンパク質 /g | 1.4 | 1.9 |
脂質 /g | 0.1 | 0.3 |
コレステロール /mg | 2.0 | 0.0 |
炭水化物 /g | 8.3 | 6.5 |
食物繊維水溶性 /g | 0.3 | 0.3 |
食物繊維不溶性 /g | 2.2 | 2.9 |
カリウム /mg | 200 | 260 |
カルシウム /mg | 36 | 80 |
マグネシウム /mg | 13 | 19 |
リン /mg | 27 | 40 |
鉄 /mg | 0.3 | 1.0 |
亜鉛 /mg | 0.3 | 0.3 |
ヨウ素 /μg | 0 | 1 |
クロム /μg | 0 | 2 |
モリブデン /μg | 2 | 1 |
β‐カロテン /μg | 82 | 1500 |
ビタミンK /μg | 8 | 110 |
ビタミンB1 /mg | 0.06 | 0.05 |
ビタミンB2 /mg | 0.04 | 0.05 |
葉酸 /μg | 72 | 100 |
パントテン酸 /mg | 0.17 | 0.23 |
ビオチン /μg | 1.0 | 1.7 |
ビタミンC /mg | 1.4 | 3.2 |
栄養成分 | 白ねぎ(根深ねぎ) | 青ねぎ(葉ねぎ) |
白ねぎ(根深ねぎ):廃棄した部位は株元及び緑葉部
青ねぎ(葉ねぎ) :廃棄した部位は株元
(可食部100g当たり)
青い部分と白い部分には、ほとんど同じ種類の成分が含まれていますが、
含有量が多い成分は青い部分のほうであることに気づかれたでしょうか?
青い部分の含有量が多い成分は次の8種類ですが、意外に多いんですね。
カリウム (1.3倍):()は白い部分に比べた倍率です。
カルシウム (2.2倍)
リン (1.5倍)
鉄 (3.3倍)
β‐カロテン (18倍)
ビタミンK (14倍)
葉酸 (1.4倍)
ビタミンC (2.3倍)
では、この8つの成分について解説していきますね。
なお、ビタミンKと葉酸については、あまり知られていない働きがあるので、
ちょっと意外に思われるかもしれませんよ。
カリウム (ミネラルの1つ)
カリウムには体内の余分な塩分や老廃物の排出を促がす働きがあります。
この働きのおかげで高血圧の予防が期待されていますよ。
なお、カリウムは水溶性で、煮たりゆでたりすると水に溶け出していまい
ますから、ねぎの場合は薬味で使うことがオススメです。
ミネラルとは?
たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミンと並び五大栄養素の1つです。ミネラルは人の体内で作ることはできないため、毎日の食事からとる必要がある。
出典:ミネラル(Wikipedia)
カルシウム (ミネラルの1つ)
「カルシウムを摂らないと骨や歯が弱くなる」と聞いたことがあると思います。
事実、カルシウムは骨や歯を構成している主要な成分なんですね。
なお、不足する期間が長くなると骨の密度が低くなって、骨粗鬆症を
発症してしまうことがあるんですよ。
骨粗鬆症(こつそしょう症)とは?
骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
出典:骨粗鬆症(日本整形外科学会)
リン (ミネラルの1つ)
カルシウムやマグネシウムと結合して骨や歯の成分になっています。
また、体内のあらゆる構成組織において、エネルギーをつくり出したり、
さまざまな代謝に関わったり、重要な役割を担っているそうです。
鉄 (ミネラルの1つ)
鉄は「血のミネラル」と呼ばれるように、血液中の酸素を運搬する重要な
ミネラル成分です。
鉄分は食物からの吸収率が低く欠乏しやすいので、日ごろから鉄を含む食材
を食べることは貧血予防には欠かせないんですよ。
β‐カロテン (ビタミンA)
青い部分に含まれるβ‐カロテンの含有量はにんじんには及びませんが、
ブロッコリーよりも多いんですね。
β-カロテンは体内で必要な量に応じてビタミンAに変換されて、体の成長を
促進させたり、視力や目の組織を健やかに保っています。
また、β-カロテン自体は強力な抗酸化作用があるので、体の老化の進行を
遅らせる効果が期待できます。
さらに、体内の粘膜や皮膚の健康に関与していることから美肌を保つため
にも欠かせないんですよ。
ビタミンK
ビタミンKはあまりメジャーなビタミンではありませんが、実は、骨を丈夫
に保つために不可欠なビタミンなんです。
カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があるので、骨粗鬆症の
治療薬にも含まれているそうですよ。
葉酸 (ビタミンの1つ)
葉酸は細胞の分裂や再生にかかわる重要なビタミンです。
特に、胎児にとっては欠かすことのできない栄養成分であり、厚生労働省
からも葉酸の摂取が奨励されているんですね。
『「副菜」で野菜の十分な摂取を』(厚生労働省)の中から葉酸について
言及している個所を引用させていただきました。
緑黄色野菜を積極的に食べて葉酸などを摂取しましょう。特に妊娠を計画していたり、妊娠初期の人には神経管閉鎖障害発症のリスク低減のために、葉酸の栄養機能食品を利用することも勧められます。
ビタミンC
皮膚のメラニン色素の生成を抑えて、シミや日焼けを予防する作用やかぜ
などの病気にたいする抵抗力を高める働きがあります。
また、ビタミンCはβ‐カロテンと同様に抗酸化作用があるので、動脈硬化
の予防や老化を遅らせることが期待されていますよ。
ねぎの特徴的な栄養成分
上記の比較表には記載していませんが、ねぎには特徴的な2つの成分があります。
一つは「ネギオール」というねぎ特有の成分で、もう一つは「アリシン」と
いうねぎに特に多く含まれる成分です。
白い部分にも青い部分にも含まれていますよ。
ネギオール
白い部分に多く含まれているねぎ特有の栄養成分で、殺菌作用とともに
発汗作用、解熱作用もあるため、風邪をひいたときには意識してねぎを食べ
るのは理にかなっているんです。
ネギオールは白い部分に多く含まれる成分なんですが、青い部分にもちゃんと
含まれていますよ。
アリシン(硫化アリル)
ねぎに多く含まれる硫化アリルは空気に触れるとねぎ自身の酵素によって
アリシンという成分に変化するのだそうです。
アリシンはねぎ独特の辛味や香りのもとになる成分で、強い殺菌・抗菌作用
があります。
また、血液の循環を良くして発汗・利尿作用を活発にしたり、免疫力を高め
る効果が期待できるので、かぜをひいたときにねぎが良いといわれるのは、
アリシンのおかげでもあるんですね。
青い部分の内側のネバネバはなに?
青い部分の内側のネバネバの粘液の主な成分は水溶性ペクチンだそうです。
ペクチンにはコレステロール値を下げる作用があるので、動脈硬化や高血圧
の予防に期待がもてます。
また、この粘液にはさまざまな物質が含まれているのですが、その中の
「マンノース結合レクチン」という成分には人の免疫系を活性化させることが
分かっているんですよ。
見た目と感触で毛嫌いされているネバネバですが、からだのために良い
成分が含まれているので、積極的に青い部分を料理に使うようにしたいですね。
参考資料:「NHK趣味の園芸」2018年 6.7月号
ねぎに青い部分があるのはなぜ?
ねぎの白い部分は土を高く寄せて育てるから白いんですが、青い部分は
日光に当たっていたので緑色なんです。
実は、ねぎは白い部分も青い部分もすべて葉で、茎は根の上1㎝足らずの
部分だけですから、青い部分を葉っぱとは言わないんですね。
なので、ねぎは白い部分も青い部分も同じ葉ですから、一本まるごと
すべて食べることができるんです。
人によっては青い部分を食べない理由に、土から出ている部分だから、
農薬が付着していそうというのがあるんですね。
しかし、昔ならいざ知らず、現在流通している野菜で残留農薬が問題に
なることは今では考えにくいです。
もし、農薬が気になるようなら、塩で軽くもみ洗いすると汚れを落とす
のと同時に農薬も洗い流されて安心できますよ。
青い部分の便利な利用方法
まず、使いやすさの点では、玉ねぎやジャガイモなどのように、皮をむく
必要がなく切るだけなので、思い立ったときにすぐに使えるのはとても便利
です。
さて本題ですが、青い部分が持っている5つの特徴をうまく利用することで、
いろいろな料理に応用がききますよ。
(1)強い香り
肉や魚の煮物の臭み取りには定番の使い方ですが、鍋もの、スープに使うと
味にさっぱり感が出るようです。
また、インスタントラーメンに加えることで、香りが立ち、お店の味が
楽しめますよ。
「薬味」「豚レバー炒め」「もつ鍋」「もつ炒め」「牛すじ煮込み」「ねぎスープ」
「ラーメン」などに。
(2)独特の辛み
辛子や七味のような辛さとは違って、じわっと感じるかくし味のような辛さといえます。
「薬味」「ねぎぬた」「酢味噌和え」などに。
(3)クセのある粘りのある味わい
香りとは別に、食感にかかわる特徴なので好き嫌いがあるかもしれませんね。
納豆にねぎを入れるのと入れないのでは、味わいが別物ですね。
「ねぎ味噌」 「納豆」 「みそ汁」「雑炊(ぞうすい)」などに。
(4)油との絶妙な相性
ねぎ独特の風味が引き出されるばかりか、青い部分に透明感が出て料理が
華やかになりますよ。
あらゆる食材の炒め物に合うようです。
「ねぎ油」「チャーハン」「ねぎの天ぷら」「かき揚げ」などに。
(5)深みのある濃い緑色
煮たり、焼いたり、炒めたりするとグッと鮮やかな緑が引き立ちます。
「かき揚げ」「卵とじ」「カレー南蛮」「お好み焼き」「チヂミ」「だし巻き卵」などに。
そもそも、「ねぎ」ってどんな野菜?
「白ねぎ」・「青ねぎ」とは?
野菜としてのねぎは、ざっくりと「白ねぎ」と「青ねぎ」の2種類に分けられます。
白ねぎ
株元に土を寄せて、日光をさえぎることで白く育てます。
土を高く寄せれば、その分白い部分が長くなるんですね。
長ねぎ、根深ねぎというときは「白ねぎ」のことを指します。
青ねぎ
土寄せしないので、根に近い所から先端まで緑色に生育しています。
葉ねぎ、万能ねぎといえば、「青ねぎ」のことです。
ただし、似たものに「あさつき」や「わけぎ」があるんですが、これらは
球根による野菜なので青ねぎではありませんよ。
一本のねぎに、2種類の野菜!?
一本のねぎなのに、白い部分と青い部分では、野菜の分類からいうと別の
ものなんです。
白い部分が「淡色野菜」で、青い部分は「緑黄色野菜」に分類されている
んですね。
青い部分で特に含有量の多い栄養成分にβ‐カロテンがありますが、青い部分
が「緑黄色野菜」に分類されている理由は、このβ‐カロテンのためなんです。
「緑黄色野菜」と「淡色野菜」の違いは?
100g当たりのβーカロテンの含有量が600μg以上の野菜が「緑黄色野菜」で、それ以外の野菜が「淡色野菜」になります。
ただし、βーカロテンの含有量が600μg以下でも使用される頻度と量が多く、色の濃いトマトやピーマンなども「緑黄色野菜」に分類されています。
白い部分に含まれる栄養成分の特徴は?
青い部分より白い部分のほうが含有量の多い成分はこの3つです。
炭水化物 (1.3倍):()は青い部分に比べた倍率です。
コレステロール(2倍)
モリブデン (2倍)
この3つの成分についても簡単に紹介しますね。
炭水化物
ご飯やパンなどに多く含まれていて、体の中でブドウ糖(血糖)に変わって、
エネルギー源となります。
なので、不足すると脳の働きが低下したり、体力が低下して疲れやすく
なったりするんですね。
だた、摂り過ぎると血糖値が上昇して、糖尿病を発症してしまう可能性が
あるため、摂り過ぎには気をつける必要があります。
コレステロール
コレステロールというと「体に悪い」という印象がありますよね。
しかし、コレステロールが不足すると皮膚や髪がカサカサになったり、血管
の細胞が弱くなって内出血の原因になったりするそうです。
とはいって、摂り過ぎると動脈硬化を引き起こす心配があるんですね。
なので、バランスのとれた食事と適度な運動に気を使って生活する必要が
あります。
モリブデン (ミネラルの1つ)
モリブデンは鉄分の働きを促がして、造血作用に関わっています。
ただ、モリブデンは食事からの吸収が良いので、普通の食事をしていれば
不足することはないそうですよ。
まとめ
ねぎを料理に使う野菜としてみたとき、白い部分に比べて青い部分はあまり
用途は多くはありませんね。
ただ、関西の葉ねぎは関東とはちょっと状況が違って、よく利用されている
ようですが。。
どちらにしても、青い部分を食材としてではなく栄養面から見てみると、
見方がまったく違ってくるんですね。
つまり、青い部分のほうに、より豊富な栄養成分が含まれているんです。
白い部分より青い部分に多く含まれる栄養成分には、つぎの8つがあげられます。
カリウム
カルシウム
リン
鉄
β‐カロテン
ビタミンK
葉酸
ビタミンC
このように、ねぎの青い部分を食べないのは、みすみす栄養分を捨ててしま
っているようなものなんです。
なので、青い部分を料理に有効に使う方法も紹介しましたので、これからは
ぜひ、挑戦してみてはいかがでしょうか。。
きっと、今までより食卓がちょっと華やかになるとともに、気付かないうちに
健やかな暮らしに役立っているはずですよ。。
尚、ねぎには青い部分に限らず、ねぎ特有の2つの栄養成分が含まれています。
ネギオール
アリシン(硫化アリル)
この2つの成分には殺菌・解熱・発汗作用があるため、風邪をひいたときに
ねぎを食べるのが良いと言われる理由になっているんですね。
「風邪は、ねぎを首に巻くと治る」の信ぴょう性にせまる3つの理由とは?